阿部梅吉の日記

梅好きの梅好きによる梅好きのための徒然な日々

ああ無情。実は私19年間…

ああ、無情。



みなさんこんにちは。

実は私、ずううっと皆さんに隠して来たことがあります。


私梅吉は、生きるために紀州南高梅を一粒くすねた罪で19年間投獄されていました。

そこではずうっと南高梅の木を切り、梅がなるまで丁寧に丁寧に気を育て、花を咲かせ、実を咲かせました。


しかしそこでは、梅の実はなるものの、梅吉は見ているだけで一粒も食べられないのです。


ああ、無情。生殺し。
これほど辛いことはありません。


看守の邪伊部(じゃいべ)君は、罪人は死ぬまで罪人と言いますし。




そして19年もの長い長い投獄生活を終えると、
そこは戦争でした。


私のいる北国は、今勢いのある名惚(なほれ)将軍の元、西の国に攻められて来ていたのです。
目的は西の国の領土拡大です。

私のいる北国は領土がとても大きいため、西の国は当然、北の国の資源を欲しがります。

北の国は海産物も豊富で、【サホロらあめん】やら【チンギスハン】やら、とても珍しくて美味しい食材の宝庫なのです。

東の国の人たちや西の国の人たちは、みな私のいる北の国に旅行にきます。

とても魅力的な土地なのです。



私は19年間、ずっと外の世界を思って生きてきました。
しかしその分、戦争をしている外の世界にかなり絶望しました。

身内もいず、友も行方知れず。

私は孤独でした。



ある時でした。

敵軍である西の国の兵士たちが、私の町を襲って来た時、
とっさに入った家に知った顔がありました。

昔よく一緒に遊んだカチューシャでした。
彼女は常にカチューシャをつけていたからそう読んでいるのです。

私たちはすぐにお互いを思い出し、昔話に花が咲きました。

19年も時を経たはずなのに、我々の間にはそんな時間の差は微塵も感じませんでした。


彼女はとても魅力的で、当時同様、明るさを保っていました。


戦争という状況でも懸命に生きようとする彼女に、私は勇気付けられました。


しかし私はこれまでの19年間のことを、彼女に言うことはできませんでした。



あるとき、
北の国の軍、西の国の軍に加えて新たな第3の勢力である革命軍が現れました。

もともとそういう団体がいたのですが、戦争が過激化するにつれて、彼らの勢いも増していったのです。

その行動も、規模も、戦争前とは比べ物にならないことになって来ました。


カチューシャは革命軍の男と付き合っていました。


私が彼女の恋愛にまで口を出す権利なんて、到底あるわけは無いのですが、はっきり言って彼女の恋愛は幸せとは言えるものでは無いのかもしれません。


彼女が愛した男は、高確率で死にますし、彼は現にそれを望んでいるかのような行為をするのです。

自殺というわけでは無いのですが、彼はいささか目的のためなら何でもするという人なのです。

たとえ死んでも構わない。

そういう生き方を選んだ男なのです。

そういう人を愛するというのは、果たして幸せなのか不幸なのか、私にはわかりません。

他人が決めることでは無いのです。

それはわかっています。

それに、彼女だって、心の何処かで自分はバカだ、と思っているのです。

私は一度だけ、彼女が自分自身のことを責めるような言い方をしたことを覚えています。

彼女は笑っていましたが、何処かさみしそうでした。



大方の恋愛がそうであるように、恋とは自分自身の理性ではどうにも出来ないのです。

たとえ自分がどうなろうとも、自然と人を好きになってしまう。

それはもう自然災害と同じで、避けられない運命にあるのです。

彼女はそういう運命の元に生まれたのです。


しかし、もしかしたら、そういうような生き方をできること自体、とても幸せなのかもしれません。

私にはわかりませんが。



革命軍の勢いは増し、彼女の愛した男は、革命軍の中でも重要なポジションにつくようになっていました。

ついには、北の国の政府を打ち破ろうという計画が現実化し、細かい作戦まで練られる段階に入って行きました。


私は革命軍とは距離を置いていましたが、その中にはなかなか良心的な人間もいて、
そういう奴らとは互いに情報を交わして、なんとか戦争を生き延びていたのです。

革命軍の中でも、過激な奴ら、それほど過激で無い奴ら、とにかく何かお祭りごとがしたいやつ、アナーキストなどなど、様々な人間がいました。

私は比較的【まとも】な奴らと、よく飲みに行っていました。

私は特に岩さんと仲が良く、彼は革命軍の中でも一目置かれていました。


彼はいつも、過激な奴らを、ええ声のハスキーボイスで理路整然と諭すのです。


それではいけないよ。

革命が苦しみの種になってはいけないよ、と。

岩さんは、苦しみが人から人へ連鎖することを嫌いました。

彼は常に新しい方法を模索していたのです。



某所某日、

革命軍は北の国の軍を打ち破ろうと計画していたとき、なんと西の国の軍が撤退したのです。

北の国は戦争に、事実上勝利しました。

北の国の寒さを、敵軍は見くびっていたのです。

北の国は地の利を使い、厳しい寒さに耐え忍んで勝利したのです。

いや、厳密に言うと西の国が負けたのです。
我々はただ戦っただけ。



しかし。

革命軍はここぞとばかりに、計画を早めました。

軍が弱っている今、政府を引きずり下ろすチャンスだと考えたのです。

戦いは泥沼化しました。

弱っている軍と勢いのある革命軍。

どちらも力量は互角だったのです。




私は、岩さんに事前に言われていたとおり、戦いの無い安全な場所に避難しました。
岩さんの部下も何人か一緒に来ました。

本来、カチューシャも来るはずでした。



しかし彼女は、土壇場になってだだをこねました。

初めからそうするつもりだったのかもしれません。

彼女は、愛する男とともに戦うことを決めたのです。


私は必死に止めましたがダメでした。

私は泣きました。

泣きながら、振り返りたくとも振り返らずに、岩さんの部下と逃げました。

それが岩さんの命令だったからです。


カチューシャをみた最後の日、彼女はカチューシャをしていませんでした。

ボロボロの手、必死な顔、振り乱した髪、細い腕、、、、、



しかし、もう私には彼女の記憶が薄れています。



逃げ終えた後、わたしはある人物と再開しました。


そう、この人に、投獄時代に何度も何度もこきつかわされた…


邪伊部君でした。



彼は初めこそ私をわからなかったものの、私の腕の傷をみて(投獄中、彼につけられた傷だ)私だと思い出したのです。

私はさらに逃げました。

逃げて、逃げて、逃げました。

岩さんとカチューシャに会いたいと思いました。

必死で逃げました。



私は、気づいたら一人でした。


 




革命は、失敗しました。




カチューシャも、カチューシャの男も、この世を去りました。

岩さんは生き残ったので、後で教えてくれたのです。


とはいえ、私が岩さんに会えたのは、革命が失敗してから2ヶ月後のことでした。

岩さんも投獄されるのです。

他の奴らよりは罪が軽かったそうですが、私には何より、彼が必要でした。

彼とあのときもっと話せていれば、悲しみはもう少し早く癒えたのかもしれません。




私は泣きました。

歩きました。

とにかく歩きました。


意味もなくお酒の瓶をひたすら割りもしました。


死んだ兵士の荷物を漁りもしました。

お腹だけは空きます。

涙は止まらず、頬は濡れ、唇と足の裏だけがいやに乾きました。




二年後、岩さんが釈放されたのです。

二年で済むとは、やはり彼はめちゃくちゃ頭の切れる男です。


私はそれと同時に、彼から一通の手紙を受け取りました。


それはカチューシャからの手紙でした。


私はまた、泣きました。

実際に驚いて腰が砕けることがあるんだなあ、と思いました。



そこには、

北の国の1番北に、私と愛する彼との子供がいる、と書かれてありました。


もし私たちの身に何かあれば、あなたが私たちの子を守って欲しい、とも。


私は泣きました。

しかし、今度は嬉し泣きでした。

彼女の生きた証が、彼女の子供に存在するからです。

彼女の面影を少しでも感じられて、私はなんとも言えない感動を覚えたのです。



私は絶対にその子を守ると誓い、北に向かいました。

北の田舎の、馬や牛ばかりいるところに、その子はいました。

まだ立ち始めたばかりの、可愛らしい女の子でした。

言葉を覚えるのは遅く、無口でした。

牛や馬、犬とよく遊んでいました。




カチューシャの夫の妹が、その子の面倒をみていたのです。

私は彼女にカチューシャからの手紙を見せ、その子を養子にしました。

彼女は快くそれを引き受けました。



私は、再生しなければならない。
この子とともに…。






それから6年が経ちました。  


彼女はすっかり大きくなり、学校では活発に活動する女の子に成長しました。


私は私で、とある梅の会社を作り、それが軌道に乗りました。

梅とお茶の専門店を若い人向けのカフェとして作り、これがヒットしたのです。

岩さんの知人が経営を教えてくれました。

会社を作ることは用意ではなかったけれど、ターゲットを絞った新たな戦略がうけたのです。


ネットや雑誌でも話題となり、

今度、お店の二号店を出すことにもなりました。



私は、風の便りであることを知りました。

邪伊部君たち、当時の刑事の何人かが、
不当な自白や供述を被害者に強要したことで逮捕されたのです。


裁判が行われ、たちまち世間の話題の渦となりました。

 

こんなひどいことをする人がいるもんなんだなあ、と誰かが言いました。

警察も信用出来ない、との声が世論になりつつありました。

時代は変わるのです。




それでも、私は夜にひっそりと、カチューシャを思い出すことがあります。

私の中では、なぜかいつも彼女はカチューシャをしています。

戦っているときも、愛する男を見つめているときも、最後に別れた時も…


こうして、記憶というものは変換されていくのです。

私はそんなとき、彼女の子供の寝顔を見ます。

そして、彼女に気づかれぬよう、声を殺して泣くのです。


大丈夫。
朝になれば、彼女の子供が隣にいるから…

今はゆっくり、おやすみ…。



別れた友を思いながら、

あとあとになって気づいた自分の気持ちをそっと胸にしまいながら、

一人の女の子を何が何でも幸せにしようと誓いながら、私は眠る。





情熱的な、世界一美しい彼女へ。

おやすみ。





……





…と、




いうのは、




、、、、



 

まっっっっったくの嘘ですが(当たり前だ!!!!)、



どうやらエイプリルフールとは、ついた嘘が一年間実現しないらしいので、どうせならめちゃくちゃ悲劇を書いてみました!!!!





…って、前フリ、ながっっ!!

Σ( ̄。 ̄ノ)ノ



まさか皆さん、ここまで読んで無いですよね?

途中で飽きてます、よね…??(^^;;







もちろん、、、



、、、




大きな元ネタは『レ・ミゼラブル(ああ無情)』です!!!





でも、わかる人はわかると思いますが、

カチューシャはトルストイの『復活』からです。




さらにさらに、、、、


ナポレオンとの戦争はご存知『戦争と平和』のパロディです。



さらにさらに、、、


これは絶対にわからないと思いますが、

岩さんはイワンから取ってます。



といっても、トルストイの書いた『イワンのばか』の方ではなく、


一応『悪霊』のイワン•シャートフの方を意識したのですが、まっっったくオリジナル要素無いですね。





、、、と、


ここまで読んでくださった方には、一年間何か良いことが絶対にあると思います!!!



無くても、

あなたはめちゃくちゃ素敵な人です!(笑)




それにしても、22時から書き始めた私を誰か褒めてください!!


それではまた!

明日も花マルで、良い年を過ごしましょう!^_^


ハッピーエイプリルフール♪